周りの話を聞いていると、特許事務所を二転三転変更しているケースというのは少なくないようです。1つ目の商標はA事務所、ちょっと対応がイマイチだったので次はB事務所、そして、どうやら安そうなので次はC事務所みたいな感じで、一括管理されないケースも少なからずあります。
ですが、これってブランド管理の面からするとタブーです。その理由について3つに分けて説明したいと思います。
1.適切な権利が取得できない
はじめは安いだけだったり、特許を頼んでいる事務所に任せてしまいがちなのですが、商標出願に慣れていない事務所に頼むと指定商品・サービス(権利範囲)が穴だらけということも少なくありません。適切な権利確保のために出願をしなおすケースもあります(ブランドの見直しと合わせて行うケースがほとんどでしょうか)。
いざ権利行使しようと思ったときにできない、権利の穴を他社に登録されてしまい自社が使用できなくなった、そんなことが起きないために、最初から商標の実績のある事務所に依頼することが望ましいと思われます。
2.余計な手間と費用がかかる
たとえば、外国商標の場合を考えてみましょう。その基礎となる日本の商標の出願時に受けた拒絶理由などを参考にしてより効率的な反論ができたり、もしくは、あらかじめ拒絶理由を回避すべく手だてが打てるなどのさまざまなメリットがあります。また、日本出願と外国出願を同じ事務所で行うとセット割引が受けられるケースも多いです。
一方、別の事務所に頼んでしまうとすると、日本出願時の情報が乏しいために外国出願の際に余計な手間がかかり、それが費用として反映されてしまいます。したがって、特に海外展開を考えていらっしゃる場合には最初から外国商標に対応可能な商標の実績のある事務所に依頼するのが好ましいものと考えられます。
3.管理が煩雑になる、ブランド戦略が統一的にできない
この商標はあの事務所に頼んだから更新指示はA事務所で…外国はこの事務所だから、B事務所で…あれ、C事務所だっけなぁ。管理が大変になるというのは、簡単に想像できるものと思われます。また、商標の情報が一元管理されていないと、有効なブランド戦略を一緒に考えていくのも難しくなってしまいます。
したがって、本気で商標に取り組む場合、そして、シンプルに管理して余計な手間と労力をかけないようにしたい場合は、一つの事務所で一元管理していくのが望ましいと考えます。
まとめ
いろいろ理由は挙げましたが、逆に言えば商標をバラバラの事務所に管理させていいことなんか一つもないということです。したがって、できるなら最初からしっかりした商標事務所を選んでタッグを組んでいくのが望ましいものと思います。
なお、特許は特許で貴社の技術分野に熟達した事務所を選んで、やはり一元管理していくのが望ましいものと思います。特許も商標も秀でた事務所というのは中小規模の事務所では少なく、大事務所はフィーが高いので、特許と商標でそれぞれベストな事務所を見つけて、それぞれ一元管理するのがベストかと思います。
なお、弊所では既存の登録の管理を引き継いで一括管理していくことも可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

弁理士 高橋 伸也

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