商標には、早期審査という制度があり、一定の要件を満たすと他の出願よりも優先的に審査を受けることができます。この制度、どうすれば使えるのでしょうか。そして、使った方が得なのでしょうか。そのへんの質問にお答えしたいと思います。

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1.商標登録出願の早期審査のメリット・デメリットは?

メリットとしては、早期審査制度を利用すると、通常の出願に比べて優先的に審査され、通常であれば審査結果がわかるまでに3か月から4か月程度かかるところ、1か月から2か月で審査結果を得ることができます。

デメリットとしては、早期審査を受けるためには一定の書類を整えて申請しなければいけないという手間・労力がかかることと、最近の特許庁の審査はスピーディなので早期審査しても2か月から3か月程度しか短縮できないという点です。

2.商標登録出願の早期審査はどういう場合に使えるの?

以下のどちらかの要件を満たす出願が早期審査の対象となります。

(1) 出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、権利化について緊急性を要する出願

(2) 出願人又はライセンシーが、出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願

ここでいう(1)「権利化について緊急性を要する出願」とは、第三者が同一・類似の商標を使用している場合など、すぐに権利化しないとブランド価値がどんどん毀損されていってしまうような場合です。

一方、(2)にはそのような要件がありませんが、使用or使用の準備を進めている商品・サービス「のみ」を指定している出願ということで、使用している範囲の周囲も権利をとって保護するのが通常ですから、これはちょっと使いづらい要件かもしれません。

3.結局、商標登録出願の早期審査はするべき?

私の見解としては、新商品のローンチが迫っているとか、それこそ第三者による使用でブランド価値がどんどん失われているような場合など、本当に緊急の場合には検討する価値がありますが、特許庁の審査スピードが向上した現在では、通常は考慮しなくていいのかなと考えています。

それよりは、事前に拒絶理由を受けなくて済むように指定商品表示を検討するとか、使用意思宣誓書を出しておくとかの対策をすることが重要なのではないでしょうか。(拒絶理由通知を受けてしまうと、どうしてもその対応に時間がかかってしまいます

まとめ

このへんの判断はあくまで弁理士と相談して決定するのがよいと思います。なぜなら、上記のような事情は業界人である弁理士だからこそ知りうるもので、そうでなければ無駄に早期審査に労力を払ってトータルで見たときに費用対効果が悪くなってしまう可能性もあるためです。

弊所ではお見積もり・初回ご相談無料ですので、商標専門弁理士の提供する商標出願サービスをぜひご検討ください。


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弁理士 高橋 伸也
早稲田大学政治経済学部経済学科卒。外国商標やマドプロに強い商標専門のフルブルーム国際商標事務所所長。日本弁理士会の海外支援委員会・貿易円滑化対策委員会委員。業界紙やWEBメディアなどで寄稿多数。 自身の起業経験及び外国商標実務の経験から、ベンチャー・スタートアップ支援と海外進出支援に力を入れているほか、助成金の活用も積極提案している。