商標の類似・非類似を決定する一番重要な要素が称呼(読み方)です。どの場合は類似して、どの場合は非類似なのか判断するのは非常に難しく、そこに弁理士の存在意義があるのですが、今回は称呼の類否判断の基本的なポイントを三つほどご紹介したいと思います。

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1.全体の文字数(音数)が少ないほど、一つの違いの重みが大きくなる

具体例を見ればわかりやすいと思います。違いが同じイとキだとしても、

2文字で1音違いの場合:アイ VS アキ

4文字で1音違いの場合:アイウエ VS アキウエ

8文字で1音違いの場合:アイウエオカキク VS アキウエオカキク

このように、文字数が少ないほど一つの違いが与える影響が大きいです。逆に、長い文字のうち1文字だけ違っていたとしてもなかなか気づかず、似ていると感じたり誤認混同が起こったりする確率が大きいと思います。

特許庁の審査基準でも、違いが一文字だけで、イとキのように同じイ段の音というような場合は原則類似となるのですが、全体が二文字なら区別可能でしょうし、八文字にもなるとちょっと厳しいかなという感じがします。四文字くらいが争いになる典型例でしょうか。

2.違う部分が語の先頭にあれば、判別しやすい

これも、具体例で考えるのがわかりやすいと思います。

1音違いが語頭の場合:アイウエオ VS カイウエオ

1音違いが語中の場合:アイウエオ VS アイクエオ

1音違いが語尾の場合:アイウエオ VS アイウエコ

このように、違う文字が語頭にあると目立ちますし発音上も強勢で発音されやすいので区別がしやすくなります。一方、語中や語尾に違う箇所があってもなかなか目立たないので違いが主張しにくくなります。

3.結合商標の場合は、どの部分から音が出るかがカギとなる

二つの語を足したような結合商標の場合には、全体としてとらえるか、一部からも読み方が生じるかによって類否判断が大きく異なるので、注意が必要です。

たとえば、「クリサンセマムブルースカイ」という商標は、「クリサンセマム(菊)」と「ブルースカイ(青空)」で分けることが可能で、取引上どちらかが省略されて呼ばれることも多々あるでしょうから、「クリサンセマム」「ブルースカイ」という称呼も生じ、それらと類似の商標とも類似するという判断になります。

一方で、「ゴリラスカイ」くらいの商標だったら意味上は分けることが可能でも全体としてさほど長くなく一体感があるので「ゴリラ」「スカイ」という称呼は生じないものと判断されると思われます。

まとめ

このように、類否判断と一口に言ってもさまざまな要素を加味して判断していることがご理解いただけたかなと思います。

弊所は商標専門の特許事務所であり、お見積もり・初回ご相談無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。


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弁理士 高橋 伸也
早稲田大学政治経済学部経済学科卒。外国商標やマドプロに強い商標専門のフルブルーム国際商標事務所所長。日本弁理士会の海外支援委員会・貿易円滑化対策委員会委員。業界紙やWEBメディアなどで寄稿多数。 自身の起業経験及び外国商標実務の経験から、ベンチャー・スタートアップ支援と海外進出支援に力を入れているほか、助成金の活用も積極提案している。