フルブルーム国際商標事務所の基礎知識シリーズです。今回は、欧州(CTM)の商標制度の大枠や特徴的な部分を三つのポイントに絞って解説いたします。
photo credit: The EU Flag via photopin (license)
1.相対的拒絶理由の審査は異議申立を受けたときのみです
拒絶理由には大きく分けて絶対的拒絶理由(識別力・公益性の問題)と相対的拒絶理由(先行商標の問題)がありますが、CTM出願の場合は先行商標との関係が審査されるのは第三者からの異議申立があったときのみです。とは言え、CTMによる先行商標の調査は行われ、出願人には調査報告、先行商標の所有者には監視通知が送られるというように、先行商標権者が不満を抱けば容易に異議申立できる制度設計にはなっています。
また、異議申立の後、審理が開始されるまでには補正などの戦略決定や交渉のためのクーリングオフ期間が設けられており、お上が決めるのではなく権利者同士で調整を図ることを奨励している自由主義的制度と言えます。
2.EU全域に権利が及びます
CTM登録の場合、EU参加国のうちの特定の国のみ指定できるような制度はなく、EU全域に権利が及びます。したがって、出願しようと思っている商標がEUのどこかの国の言語で識別力が認められないと、CTM出願に係る商標の識別力が認められません。もちろん、引用商標についても同様の考え方ができます。また、最近ではEUの参加国が増加していますので、一国のみの使用で不使用取り消しを免れるとも言い切れない情勢となってきています。こうした点はメリットでもありデメリットでもあるので、CTM出願をとるか、各国出願をとるかよく戦略を練る必要があります。
3.指定商品の指定方法に注意
いわゆるクラスヘディング表示については、その区分のすべてを表示したことになるのか、または、クラスヘディング表示から包含されると考えられる範囲に収まるのか、そもそもクラスヘディング表示を使ってはいけないのかなど国によって扱いは異なりますが、CTM出願でもクラスヘディング表示を巡ってこれまでさまざまな紆余曲折がありました。現状CTMの場合はクラスヘディング表示が許されている区分とそうでない区分があり、前者においてもその表示から包含されると考えられる商品・役務のみカバーするという考え方が採用されているようです。
こちらは欧州司法裁判所でさんざん争われた結果採用された運用で、細かいところで微調整され続けているので、出願時に自社の希望する保護範囲を保護するのに妥当なアプローチを適宜確認する必要があると言えます。
欧州(CTM)での商標登録のまとめ
上記3ポイントを踏まえますと、日本のような一か国のみカバーする権利とは制度上大きく異なり、また、判例によってその運用も大きく変わってきている部分がありますので、現地代理人より最新の情報を手に入れて的確な出願を行うことが求められます。したがって、日本企業にとっては難易度の高い地域と言えるでしょう。マドプロでも指定可能ですが、このへんの事情をしっかり把握した上で専門家と協力して出願すべきだと思われます。
もちろん、弊所にご相談いただければマドプロでも、直接出願でも安心・高品質なサービスでCTMでの商標登録を誠心誠意サポートいたします。
欧州(CTM)の商標登録出願についてのご相談は、外国商標登録やマドプロに強い、商標登録専門事務所へ。

弁理士 高橋 伸也

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