米国で連邦商標登録することの意味は、ほかの国とはちょっと違います。そこを押さえた上で商標出願するのが理想的だと思いますので、今回は米国商標登録の代表的なメリットとデメリットについてお話ししたいと思います。(制度面での特徴についてはこちら→米国での商標登録の基礎知識

メリット1.全米で有効な商標権として取り扱われる

米国は使用主義の国ですので、使用を継続している限りはコモンロー上の権利が生まれ、その使用の範囲において権利を有することができます。しかし、いざ争いが起きた場合には、それを立証する必要が出てきて、それにかかる労力・費用等考えると楽ではありません。

その点、連邦登録を取得しておけば、全米に通知されらものと擬制され、全米における排他的権利を持つ証拠となります。たった1年2万円程度の出費で訴訟大国アメリカにおけるそのような安定した地位が得られるのですから、これは大きなメリットと言えるでしょう。

メリット2.紛争の予防

権利意識の強いお国柄なので、日本以上に商標は重要視されていて、商標の採択にあたっては事前の調査が必要不可欠であると考えられています。したがって、連邦登録しておけば、第三者が同一・類似の商標を採択しようと考えた際にひっかかるので、トラブルを事前に抑止することができるのです。

デメリット1.使用していなければ保護されません

デメリットとして挙げるべきかは迷うところですが、使用主義の国なので実際に使用されていなければ保護されることはありません。使用意図に基づく出願は使用の陳述書を出さなければ登録になりませんし、外国登録・マドプロベースの出願でも、登録後権利行使にあたっては米国における使用の事実が必要になってきます。このあたり、使用してなくても一定の保護が受けられる日本とは大きく異なりますので注意が必要です。

デメリット2.使用宣誓書は事実を正確に記載する必要がある

登録5年経過時から1年の間に出す8条宣誓書などの使用宣誓書においては、実際に使用している商品・サービスのみを記載する必要がございます。使用していないのに使用宣誓書の記載に含めてしまうと、フロードとなり商標登録の取り消しにつながってしまう恐れがあります。このへんのことは争いが起きた場合にはその相手方により攻められる恐れがある点ですので、日本の商標登録とは別モノと考えて、はじめからきちんと使用している商品・サービスのみ含めるよう気をつける必要があります。

まとめ

以上のように、日本の商標制度とは大きく異なることを理解した上で、適切な権利を取得することが重要です。米国の商標登録出願についてのご相談は、米国商標登録やマドプロに強い、商標登録専門のフルブルーム国際商標事務所へ。


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弁理士 高橋 伸也
早稲田大学政治経済学部経済学科卒。外国商標やマドプロに強い商標専門のフルブルーム国際商標事務所所長。日本弁理士会の海外支援委員会・貿易円滑化対策委員会委員。業界紙やWEBメディアなどで寄稿多数。 自身の起業経験及び外国商標実務の経験から、ベンチャー・スタートアップ支援と海外進出支援に力を入れているほか、助成金の活用も積極提案している。