2015年4月より音の商標や色の商標の商標登録が認められるようになりました。施行からもうすぐ1年が経とうとしていますが、登録になった数はまだまだ少なく、大手企業の出願が中心です。

こんな中で、中小企業やベンチャーが音や色の商標を登録できたらマーケティング上の武器になるんじゃないかと思います。音の商標取得を考えておられる中小企業・ベンチャーのためにその基礎知識を提供したいと思います。

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1.音の商標や色の商標がいままで登録できなかった理由

音の商標や色の商標が、今まで登録できなかったのはなぜだかわかりますか?それには大きく二つの理由があります。

一つには、音だけ・色だけで自社と他社を区別する目印となるケースが非常に稀だからです。すごーく有名になれば、この業界でこの色と言えば○○社だ、などという状況になるでしょうが、逆に言えば余程有名じゃないと色だけでは商標として機能しません。

もう一つは、音や色というのは誰もが自由に使えるものですので、それを独占させるというのはまずいということです。たとえば、ある会社が炊飯器について赤色、青色、白色、黒色などの主要な色を根こそぎ商標登録してしまった場合に、他社がそれらの基本的な使えなくなってしまっては炊飯器のデザインの幅が狭まり、需要者の利益も競争環境も害するでしょう。

2.音の商標や色の商標も、結局普通の商標と同じです

それでは、今回音や色の商標登録を認めたことによって、どんな音や色であれば登録できるのでしょうか。

いろいろ審査基準はありますが、要は商標としてしっかり機能すればいいわけです。具体的には、自社商品と他社商品を識別する力を有しているか否かがポイントとなります。

音で言えば、たとえば単音ですとそれだけで識別するのは難しいですし、独占を認めるわけにもいかないのでアウトです。一方、歌謡曲のような曲としてしかみなされず商標としては受け取られないものもアウトです。たとえば小林製薬の登録第5804301号「ブルーレットおくだけ♪」のようにほどよく短く、識別力があるものが登録対象となるわけです。

3.マーケティング戦略としての音の商標出願

色の商標や音の商標は、中小企業やベンチャーには縁遠い話なのでしょうか?答えとしては、音の商標については検討する余地があると思われます。

色の商標については、単色では相当有名でない限りは登録にならないと思われますし、2015年10月発表の登録査定第一陣で色の商標は一件も登録になっていないことを踏まえると、まだまだ様子見段階かなと思います。

一方、音の商標については、音のみで登録を取ることは難しいでしょうが、歌詞とセットで取ればその歌詞の部分で自社と他社を判別できますので、比較的容易に登録を得ることができると思います。実際には、文字商標を有していればそれで十分という面がありますが、マーケティング戦略の一つとして音の商標を出願し、アピールしていくという手はあると思います。

まとめ

このように、新しい商標の恩恵を受けるのは基本的には大企業なのですが、中小企業やベンチャーも話題づくりの一環として検討していく価値はあると思います。

弊所は、単に登録だけ行う事務所ではなく、マーケティング戦略等まで一緒に考えられる商標弁理士として活動しております。ぜひ、一緒に商標の戦略的活用について考えていきましょう!


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弁理士 高橋 伸也
早稲田大学政治経済学部経済学科卒。外国商標やマドプロに強い商標専門のフルブルーム国際商標事務所所長。日本弁理士会の海外支援委員会・貿易円滑化対策委員会委員。業界紙やWEBメディアなどで寄稿多数。 自身の起業経験及び外国商標実務の経験から、ベンチャー・スタートアップ支援と海外進出支援に力を入れているほか、助成金の活用も積極提案している。